ザワザワしながら読まずにいられない広告と印刷の業界物語

読書コピーライター

どーもー! DOMOコピーライターのセキネです。

最近のテレビドラマでは医療界を描いた作品が人気だそうです。いわゆる「業界もの」というやつですね。
ふだん一般の人が知ることのない世界の裏側なんかも垣間見ることができて、単純な僕は「なるほどね~」と素直に感心したりするわけですが、その業界にいるプロからすれば「いやいや、そんなの現実にはありえねぇから」と突っ込みを入れたくなる場面も少なくないと聞きます。
とはいえ、ドラマの場合、あくまでフィクションですから。おもしろければ、それはそれでいいのではないかと。。。

さて今回は、僕が働く広告業界を描いた小説と、いつもお世話になっている印刷業界が舞台のマンガを紹介します。

広告代理店の新人営業マンが突っ走るノンストップ業界小説


「広告狂想曲24時間」松本 周(角川文庫)

 

これ、書店で偶然手にした一冊だったのですが、予想以上の面白さでグイグイ引きこまれました。

さわりを少しだけ紹介すると。。。

主人公は中堅広告代理店の新人営業マン。
大手不動産会社が進める巨大マンションのプロジェクトを担当しています。
ところがプレゼンした広告計画が、けんもほろろに却下され、
最後のチャンスとして再提案を命じられます。タイムリミットは24時間。
……と、ネタバレにならないようこのへんで抑えておきますが、
とにかく主人公が次から次へといろんな問題に巻き込まれるのです。

そのトラブルのディテールが、めちゃくちゃリアル。
同じ業界の人間として「そんなのありえねぇ」ではなく
「それって、ありえる(かも!?)」という場面の連続です。
本の帯を見たら、著者の松本周氏は現役の代理店営業マンだそうで。
なるほど、だからリアリティがあるのか~。

かく言う僕も、実は新卒で広告代理店に入社し、2年と少し、営業をやっていました。
だからでしょうか、エピソードの一つひとつが身につまされて仕方がない。
読んでいる間ずっと胸がザワつきっぱなしでした。

命取られるわけじゃない、と言われた過去

物語の途中、身も心もズタボロの主人公を見かねた部長(主人公の数少ない味方)が、こんなことを言います。

「頑張れよ。別に死ぬわけじゃない」

僕はこのセリフを読んでハッとしました。
なぜなら僕も代理店営業時代に同じことを上司から言われたからです。

「この仕事、どんな厳しくても、命取られるわけじゃないから」

こんな小説まがいのこと言われるなんて、いったい何があったのでしょう???
残念ながら、その前後の状況はまったく覚えていません(笑)。
おそらくとんでもないヘマをしでかしたのでしょうね。
泣きそうな顔をして上司にすがりついたに違いありません(笑)。

道を決めるのは自分だ!!

それにしても、死ぬ、とか、命を取られる、とか、なんと物騒な!!
そんなセリフが飛び交うほど広告業界って過酷なのか?
いやいや、さすがに切った張ったはないですよ!
しかしどんな職種にだって修羅場は起こりうるものですし、
人間誰しも覚悟を決めて腹をくくらねばならない時、
納得いかない理不尽にも敢えて屈しなければならない時……、
そりゃいろいろあるわけで。

それでも決してあきらめない主人公の姿を見て思ったのは、
人生の岐路に立った時、あるいは重要な選択を迫られた時、
最終的な決め手となるのは、
出来るか出来ないか、ではなく、
やりたいかやりたくないか──。
その気持ちに尽きる、ということ。
道を決めるのは、結局は自分自身ですからね。
(と、気楽な独り身だから言えるのかも…?)

さてさて、物語の結末はどうなったでしょうか?
気になる方は、ぜひ読んでみてください。

広告狂想曲24時間
文庫「広告狂想曲24時間」のあらすじ、最新情報をKADOKAWA公式サイトより。現役広告代理店マンが放つ、リアルすぎるノンストップ・お仕事小説!

 

 

印刷業界の「あるある」が人気のWEBマンガ、遂に単行本に!!

次にご紹介するのは、印刷業界の「あるある」を描いたマンガです。

「いとしの印刷ボーイズ 業界あるある『トラブル祭り』」奈良裕己(学研プラス)

 

WEBで連載中の「今日も下版はできません!」が、晴れて書籍化されたものです!!
(待ってました~♫)

失敗の恐怖に胸ザワザワ

舞台はとある印刷会社。ここの営業マン・刷元正(すりもとただし)とその愉快な仲間たちが繰り広げる涙と笑いのお仕事物語です。

下版HP

※出典:Get Navi Web「今日も下版はできません!」

タイトルにもある通り、印刷で起こりがちなトラブルネタがてんこ盛り。
印刷業界の人はもちろん、僕らのような広告制作業に携わる人間や、広告代理店の人、そしておそらく企業の宣伝課や販促担当の人も、このマンガを読めば「そうそう!あるある!」と膝を叩くことでしょう。と同時に、誰もが一度や二度(あるいはそれ以上)、必ず経験している失敗を思い出し、なおかつ現在進行形でいつ自分の身に降りかかるかわからないトラブルの恐怖に戦々恐々としながら、胸をザワつかせずにはいられないはず。

たとえば

刷り直し
文字どおり「印刷やり直し!」という意味です。なんらかのトラブルで印刷不良が起こった際に刷り直しになります。用紙の手配からやり直しで、お金も時間も無駄にかかっちゃうわけです。

印刷ボーイズ見開き

※引用:奈良裕己「いとしの印刷ボーイズ 業界あるある『トラブル祭り』」学研プラス p.54

いやぁ~、何と恐ろしや! 広告の仕事を続けて約30年になりますが、今なお絶対聞きたくないワードのベスト1です。

しかし! 自慢じゃないですが、僕も何度か経験がありまして……。一番ひどかったのは、代理店の営業時代、求人情報誌に載せる担当企業の1ページ広告を、写真が「アタリ(※)」のまま印刷OKを出してしまったこと。発行部数は数千?数万?……忘れましたが、全部刷り直しでした。とほほ。
※「アタリ」とは、実際の仕上がりではこんな図や写真が入りますよ、というイメージを一時的に入れておくもの。詳しくは「いとしの印刷ボーイズ」をご覧ください。

業界人の新たなバイブルに!?

で、この本にはそうした印刷トラブルの原因がわかりやすく説明されている上に、「今さら聞けない」的な用語解説も載っています。専門知識の再確認ができるので、関係者にとっては「教則本」としても役立ちそうです。もしかしたら業界人の新たなバイブルになるかもしれません。

作者の奈良裕己さんは、元・印刷会社の営業マン。業界の厳しい現実もユーモアをもって描いていて、決して「ブラック」に描こうとはしていません。登場人物もみんなチャーミングです。だから応援したくなる。主人公たちが苦労してトラブルを乗り越えると、ラジオドラマ「安部礼司」にも似たすがすがしささえ感じるもんなぁ。そして「この作品描いた人、印刷の仕事が好きなんだろうな~」と、勝手に作者の「印刷愛」を想像して、しみじみしたりしています。続刊も大いに期待します!

『いとしの印刷ボーイズ 業界あるある「トラブル祭り」』
ゲットナビウェブで人気の漫画連載「今日も下版はできません!」をもとに書籍化した一冊。120以上の印刷用語解説などを追加収録。中堅の印刷会社「ナビ印刷」を舞台に、毎回起こる印刷事故に現場はてんやわんや。

WEB連載もあるよ ↓
今日も下版はできません!

 

 

その仕事に愛はあるか!?

今回ご紹介した2つの作品を読んで思ったことは、「仕事愛」。どんな仕事でも、結局「好き」という気持ちが最後にモノを言うような気がします。

もちろん僕も、なんだかんだ言って、やっぱり広告の仕事が「好き」なんだろうな~。
30年もこの仕事を続けているわけだから。
まぁ、言い換えれば、「ほかにはなんにも出来ない」とも言えるのですが。。。

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