神様がくれたもの

新聞広告コピーライター

どーもー! DOMOコピーライターのセキネです。

普段は広告の企画を考えたり、文章を書いたりする仕事をしています。
今日は僕が若かりし頃に出会った忘れられないコピーを紹介します。

神コピーとの出会い

男が、
大泣きしたって、
いいじゃないか。

※引用:仲畑貴志『ホントのことを言うと、よく、しかられる。(勝つコピーのぜんぶ)』(2008)宣伝会議、p.163

 

これは、今から20年ほど前の新聞広告のキャッチコピーです。
実は日本酒の月桂冠の広告なんですね。
作者は僕が「神」と崇めるコピーライター・仲畑貴志さんです。
(というか日本全国ほぼ全てのコピーライターにとっても「神」な存在だと思います、ハイ)

そしてキャッチコピーの後には、こんな神なボディコピー(本文)が続きます。
ちょっとおつき合いください。

 

小学生のころ、父親と風呂へ入るのが嫌だった。だって、石鹸で洗った頭を流すとき、風呂オケに入れたお湯をザーッザーッとかけまくるんだもの。それは、子供からすればえらいイキオイで、文字通り、息をつくヒマがない。息ができなくて、苦しくて、あまりにつらいので、細い声で訴えると「なんだ、男の子だろ」のひと言とともに頭に一発、ゲンコがコン!ときた。男らしさというのがあってもかまわない。女らしさというのもいいだろう。しかし、痛い、つらい、悲しいに、男女差はないと思う。私たちは、女や男である前に、人間なのだ。諸君、泣きたい時は、泣こうじゃないか。人間らしく。酒を飲んで泣いたって、いいじゃないか。

 

ホントにおいしい日本酒を飲んでいますか。月桂冠

※引用:仲畑貴志『ホントのことを言うと、よく、しかられる。(勝つコピーのぜんぶ)』(2008)宣伝会議、p.163

 

 

男が大泣きした理由

 

いかがですか?

 

お酒の広告なのに、切り出しは、なぜかお風呂の思い出話。
そういえば僕の家も昔はシャワーがなくて、
この主人公のように洗髪は湯ぶねからお湯をすくってやってました。
シャンプーハットかぶって(笑)。
「ゲンコ」ってのも懐かしい! 子供の頃はよく喰らったものです。
今の時代だと体罰とか虐待とか言われちゃうのかな?

 

……なんて読み手のノスタルジーをかき立てる前段を経て、
「私たちは、女や男である前に、人間なのだ。」と来る。
今でこそ広まりつつあるジェンダーフリーの考えですが、
20年も前に、このようなカタチでサラリと表明していたとは、さすが神!

 

そして最後は、人間らしさとお酒とを結びつけ、
日本酒の広告として巧みに締めくくっています。

 

オーマイガッ!
嗚呼、私の神よ!

 

このコピーを読んで、僕はあまりの感動に言葉を失い、
次に「こんなコピー、逆立ちしたって書けねぇ!」と逆ギレし、
おこがましくも神と同じ肩書(職業)で生きている自分の
あまりの実力のなさが情けなくて、
大酒かっ喰らっいながら泣いたのでした。
(男が泣いたって、いいじゃないか!!)

 

神様がくれたもの

 

あれから20年。
まだまだ駆け出しだった若造は
気がつけば50を過ぎたおっさんになりました。
しかも独身です。
いや、そんな話はどーでもよい。

 

あの日、神が僕にくれたのは
「人間を見つめることの大切さ」。
人がどう生きて、何を感じているか、
あたたかなまなざしで見つめたその先に、
人の共感を呼ぶコピーが生まれる。
勝手にですが、そう思っています。

 

神はまだまだ遠く、これから一生かかっても
足元に近づくことすらできないかもしれませんが、
願わくば神のような人間味のあるコピーを書いていきたい。
そんなことを思う今日このごろです。

 

 

新聞広告
※東京コピーライターズクラブ『TCC広告年鑑1997』(1997)誠文堂新光社、p.29

 

最後に

 

神、神、と連呼するとまるであの世のお方のようですが、
仲畑貴志さんは、もちろん今も第一線でご活躍中です!

 

 

仲畑貴志さんの仕事が読める本 ↓

『ホントのことを言うと、よく、しかられる。(勝つコピーのぜんぶ)』(宣伝会議)

『みんなに好かれようとして、みんなに嫌われる。(勝つ広告のぜんぶ)』(宣伝会議)

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